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Nianticの言うプラットフォームとは何か考えてみた

概要

2016年11月のトレンドエキスポ東京2016の基調講演にて日本法人である株式会社ナイアンティックの村井説人社長が「イングレスとポケモンGOをリリースしたNianticはゲーム会社ではなく、プラットフォームを開発する企業であることから1年2年ではなく、"一生の友人として一生付き合うように"開発を行う」と述べていたのを受けて、RuinDigが2016年に考察したものを転載し、修正を加えたものです。

<キーワード>Niantic(ナイアンティック)、プラットフォーム

1. プラットフォーム・ビジネス

 プラットフォームとは、技術開発や製品企画の分野、産業組織の理論などにおいて「異なる要素やグループを結びつけてネットワークを構築する基盤」という意味で使われています。「プラットフォーム・プロバイダー」とはプラットフォーム(製品)を提供し、複数の異なるユーザー・グループの「やりとり」を促すためのインフラとルールを提供する主体のことであり、そのようなビジネスは「プラットフォーム・ビジネス」と呼ばれます。
 例えば、アマゾンは書籍やDVDなどの商品を販売する売り手グループと、それを購入する買い手グループが集まるマーケットプレイスを提供し、取引をサポートすることで利益を得るプラットフォーム・ビジネスを行っています。

2. Nianticはゲーム制作会社ではなく位置情報を核としたプラットフォーム会社

 『Ingress』や『PokémonGO』を開発するNianticはトレンドエキスポ東京2016での基調講演で、日本法人である株式会社ナイアンティックの村井説人社長は「イングレスとポケモンGOをリリースしたNianticはゲーム会社ではなく、プラットフォームを開発する企業であることから1年2年ではなく、"一生の友人として一生付き合うように"開発を行う」と述べていました*1
 ここでの「プラットフォーム」とはどのような形を指すのか。村井社長は具体的には触れなかったので、私の考察を述べます。
 どのような形を指すのかと考えた際、2つの形が考えられます。1つは「ユーザー同士を繋ぐ」という意味でのプラットフォームです。Nianticは、Ingressにおいて【全世界が舞台・動いて遊ぶ・新しい視点から見ること・現実世界の友情を作る】という4つの指針を掲げていて、【現実世界の友情を作る】という指針から、Ingressを通じてユーザー同士が繋がるという点から「ユーザー同士を繋ぐ」という意味でのプラットフォームが考えられます。
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 2つ目は、「ユーザーと第三者企業を繋ぐ」という意味でのプラットフォームです。
f:id:edgeknight:20180523130649j:image CNET Japanの『Ingressは「究極のネイティブアド」--ナイアンティック社長の村井氏 - (page 2)』では、”Ingressにおけるビジネスモデルは、ゲーム内課金とパートナーシップである。ゲーム内課金モデルはゲーム性をあまり付与しておらず、提供されるアイテムはゲーム進行を有利に導くといった直接的に必要なものでなく、「ポータルに立てる旗」といったコミュニケーション円滑化ツールなどとして使われる。パートナーシップモデルは、企業のマーケティングブランディング活動、自治体の地域活性化運動などでの活用を想定。すでに、ローソン、三菱東京UFJ銀行伊藤園岩手県や神奈川県横須賀市などで実際に活用されている。このモデルでは、リアルな店舗やATM、史跡などをポータルに設定し、訪問を促す。Cost Per Visit(CPV)という概念を取り入れ、Ingressユーザーが訪れて何らかのアクションをすると1visitとカウントする。こうした仕組みで、店舗などの認知度向上、リアル店舗の商圏拡大、競合店舗の差別化、さらには顧客ロイヤルティを強化できる。興味深い事例だと、伊藤園が災害用の自動販売機をポータル化し、普段からこの特殊な自動販売機の設置場所を認識してもらうと同時に、社会貢献する姿勢をアピールするブランド認知に役立てている。”と述べられています。

 また、日経デジタルマーケティング2016年3月号に掲載された『三菱UFJ銀、店舗の所在認知の低さが判明 スマホ位置ゲーIngress」で解決狙う』では、”三菱東京UFJ銀行は、Nianticによる過去の調査で支店数では他行に引けを取らないことが十分に認知されていないことが判明した。これにより、同行はNianticと提携して約1700の支店とATMをポータル化した。ポータル化によってユーザーは様々なアクションを起こす上で支店やATMの位置を調べる必要があり、こうして店舗の位置を覚えてもらうことを狙った。”と述べられています。これらの、店舗などの認知度向上やリアル店舗の商圏拡大を目指すことなどから、Ingressを通じて「ユーザーとIngressとのパートナーシップを結ぶ第三者企業を繋ぐ」という意味でのプラットフォームが考えられます。
 そして、このゲーム内課金モデルとパートナーシップモデルの組み合わせは、Google等の検索サイトがウェブページの訪問者に加えて、広告主のサイドからも収入を得るツーサイドビジネス(実際には、ウェブページの訪問者側に課金をしない例が多く見られます)と捉えることができるとも考えました。

 

【参考文献】
1. 丸山雅祥『経営の経済学【新版】』有斐閣、2011年。

2. CNET Japan(2016年3月21日)『Ingressは「究極のネイティブアド」--ナイアンティック社長の村井氏 - (page 2)』https://japan.cnet.com/article/35078185/2/、最終アクセス日:2016年12月19日。

3. 日経デジタルマーケティング2016年3月号『三菱UFJ銀、店舗の所在認知の低さが判明 スマホ位置ゲーIngress」で解決狙う』pp.16。

 

三菱東京UFJ銀行は2017年12月12日をってIngressとの提携を終了しています。詳しくは、「三菱UFJ銀行Ingressとの提携終了のお知らせ(http://www.bk.mufg.jp/info/20171212_ingress.html、2018年5月22日参照)」をご覧ください。

 

このページの基となるオリジナルは以下の通りです。

[Ruin Dig] at Google+: "Nianticの言うプラットフォームとは何か考えてみた", https://plus.google.com/+RuinDig/posts/4NtcdUM8DoB, posted on December 25th, 2016.
Internet Archive:
https://web.archive.org/web/20190123192807/https://plus.google.com/+RuinDig/posts/4NtcdUM8DoB

*1:blog-RuinDig(2017年)「『ポケモン GO』や『イングレス』は、 ビジネスや社会にどのような影響力があるのか」https://ruindig.hatenablog.jp/entry/tet2016/niantic、2017年11月16日公開、2018年5月22日参照。