書籍紹介
『イングレス ザ・ナイアンティック・プロジェクト』はNiantic, Inc.(Niantic社)が開発するスマートフォン用位置情報ゲーム「Ingress」の公式小説。著者:フェリシア・ハジラ=リー、監訳:土屋つかさ。
日本語版は紙と電子書籍で、
英語版はKindleで読める。
あらすじ
2012年12月1日*1にスイスのCERN(欧州原子核研究機構)で行われていたナイアンティック計画の研究の際にパワーキューブが暴走した事故「啓示の夜」以降のデブラ・ボグダノヴィッチ(ナイアンティック計画のメンバーの1人)の逃避行をはじめとする、「啓示の夜」以降のナイアンティック計画を取り巻く様々な人物の動向を描いている。
合わせて、「啓示の夜」の前後を描いたIngress公式コミック『イングレス・オリジン』も紹介しておく。日本語版・英語版の両方がKindleで読める。
本の内容に関わるメモ
あえて隠しているが、ここを見ながら読み進めるという事も可能。
【メモ】以下、第1章からエピローグまで
第1章
- 「啓示の夜」の事故の後、デブラ・ボグダノヴィッチが列車に乗ってスイスのCERN(欧州原子核研究機構)から逃亡する様子を描いている。
- CERNにおけるヒッグス粒子研究の一環として、エキゾチックマター(XM)が発見、定量化された。
- 神経生物学者のジーク・カルヴィン(エゼキエル・カルヴィン)はXMから検出される素粒子レベルの脈動の波形から導き出したダイアルトーンをげっ歯類や霊長類の脳に電気パルスとして浴びせた。オリバー・リントン=ウルフはXMが集中するエリアへ人間を導くために地図を用いたスマートフォン用アプリの開発を進めた。
第2章
- フィリップスとファーロウによってローランド・ジャービスとデブラとは別の人物が射殺された。ジャービスの遺体からXMが放たれた。
- デブラはクリスティー・ノヴォセル博士と合流。
- 855はカール・アメストンに成りすました。
第3章
- 855とクロアチアの首都ザグレブ。
第4章
- 855はフィリップスからデブラとファーロウの殺害命令を受けている。
- チトー元帥広場。トリップアドバイザーでは名称が「クロアチア共和国広場」となっていて、Googleマップで「クロアチア共和国広場」検索すると、イェラチッチ広場が見つかる。
Husond - CC-BY-SA-4.0 - Wikimedia Commons
- ザグレブ大学。
- スロベニアのディヴァーチァ市の近くにあるシュコツィアン洞窟群はカルスト地形の鍾乳洞の世界自然遺産。
スロベニア語版ウィキペディアのLander - CC-BY-SA-3.0 - Wikimedia Commons
Guy Fawkes - CC-BY-SA-2.0 - Wikimedia Commons
Loxy!! from Vancouver, Canada - CC-BY-2.0 - Wikimedia Commons
第5章
- マーテル・チェンバー。
- 瀕死のファーロウ。
第6章
- デブラはシュコツィアン洞窟群からローマにたどり着いた。
- トレビの泉。デブラがここにいたのは夜だろうか?
デブラは泉を見つめた。彫刻はやわらかな光に照らされていた。青くはないが、緑でもない。
出典:フェリシア・ハジラ・リー著、土屋つかさ監訳『イングレス ザ・ナイアンティック・プロジェクト』p.92、星海社、2015年10月27日。
Diliff - CC-BY-3.0 - Wikimedia Commons
Sakena from Copenhagen, Denmark - CC-BY-2.0 - Wikimedia Commons
- ハンク・ジョンソンがテレビシリーズの売り込みにトレビの泉を訪れていた。パワースポット。
- デブラはまだXMが自分にどう作用するのか分かっていない。
- フォルマッジオ。
- ユエン・ニィ:女性。中国系アメリカ人2世。マーシーハースト大学のインテリジェンス研究所からNIAに採用され、NIA内に敵勢力排除のための実働部隊を組織。
- NIAは大型ビジネスジェット機、ガルフストリームG550を所有。
- サファイアトニック。
- オリバー・リントン=ウルフは、XMは車を作り、かつ自らをガソリンに作り変えられる石油のようなものだと説明した。
- ローマ国立21世紀美術館とあるのは、現在はイタリア国立21世紀美術館。MAXXI=マキシィと読む。設計を手掛けたのは新国立競技場の設計案が話題となったザハ・ハディド。
Francisco Anzola from United States - CC-BY-2.0 - Wikimedia Commons
Commonurbock23 - CC-BY-SA-3.0 - Wikimedia Commons
Commonurbock23 - CC-BY-SA-3.0 - Wikimedia Commons
イタリア国立21世紀美術館の館内。
- ADAはデブラをモニタリングしている。デブラの友人・家族・同僚・昔の恋人などを問わず誰もが対象になっている。
- デブラはアレッサンドロ・カッセリ博士と合流。
第7章
- 瀕死のファーロウ。シュコツィアン洞窟群の出口に着いた時には警察・救急隊・観光客はいなかった。
- 「鉄飯碗」(ティエファンワン):仕事が必要な人間には誰にでもできる仕事が与えられるという意味らしい。
-
上海の肇嘉浜路(ザオジャバンル)通り、徐家匯(シュージァフィ)公園。
江上清风1961 - CC-BY-3.0 - Wikimedia Commons
Morgenmauer - CC-BY-SA-3.0 - Wikimedia Commons
Morgenmauer - CC-BY-SA-3.0 - Wikimedia Commons
- ヒューロン・トランスグローバルのソンとレイ。
第8章
- 年老いた女主人とオートバイのヘルメットを持つ男。
- ヘリコプターに乗ったデブラはイリヤ・ペヴソヴの元へ。
- 歴史上で最も力を持っていた人物。それはアレキサンダーやフビライ・ハン、毛沢東、オバマ大統領ではなく、パブロ・ピカソ。自ら作り出す物の価値の高さを利用して自分が銀行になった。
- ナイアンティックを辞めたデブラはシェイパーとの終わり無き軍拡競争に突入する前にXMの武器化を止めようとしている。
- 855=マイケル・ギルブライト。
第9章
- ファーロウはオーストリアのグラーツに着く。グラーツはオーストリアの首都ウィーンから約145km離れた南南西の方向にある街。オーストリア第2の都市。
- 腸を撃たれた被害者の多くはひどい渇きの感覚に襲われる。
- ファーロウはNIAの隠れ家で自分に応急処置を施した。NIAの隠れ家というだけあって、衣服・武器・医療品が揃っている。遠隔の監視装置も稼働しているようだ。
- 上海の豫園(ユーユェン)。
KimonBerlin - CC-BY-SA-2.0 - Wikimedia Commons
Another Believer - CC-BY-SA-4.0 - Wikimedia Commons
Another Believer - CC-BY-SA-4.0 - Wikimedia Commons
- 携帯電話連動型の爆弾をバイクに積み、爆破。
第10章
- ヴュンスドルフはドイツ北東部、ベルリンから直線距離で約40km南にある街。
- ヒューロン・トランスグローバルはアフリカにも事業展開しているようだ。アフリカでの事業管理をする取締役が死亡している。
- イリヤがデブラに用意した研究室は、デブラの声紋を鍵とする扉・サーバー・ハードディスク・クリーンルーム・電子顕微鏡・高域幅デジタルオシロスコープと高速信号発生機のセット・ロジックアナライザが揃っている。どれも新品。
- ジャービスが生きている?幻覚か?
- ジャービスはXMを浴びた「啓示の夜」でナイアンティック計画が崩壊する事に気づいた。
- ファーロウもXMを浴びた事で、未来が見えるようになっているのだろうか。
第11章
- イリヤの会社としてヴィスルの名前が登場。ヴィスル・メディア・グループはハンク・ジョンソンのドキュメンタリー番組「ノマド」に関心がなく、デブラのために来させられた。
- エラスムスブルク(Erasmusbrug)、またはエラスムス橋。ハンク・ジョンソンによると、デジデリウス・エラスムスという中世のカトリック司祭にちなんで名付けられたらしい。
Henk Monster - CC-BY-3.0 - Wikimedia Commons
Guilhem Vellut from Annecy, France - CC-BY-2.0 - Wikimedia Commons
- ダークXM。
- ピョートル大帝の彫刻。ピョートル大帝の像というと、ロシアのサンクトペテルブルクにある「青銅の騎士」と呼ばれる騎馬像とロシアのモスクワ川沿いのクリムスカヤ・ナベレジュナヤ通り(Krymskaya Naberezhnaya)の向かいにある像が有名だが、ロッテルダムにあるピョートル大帝の彫刻はエラスムス橋の南西、ニューウェ・マース川の北岸にある。"Peter the great Rotterdam"と検索すると見つかる。
Maximiliaan Ronaldszoon - CC-BY-SA-3.0 - Wikimedia Commons
ロッテルダムにあるピョートル大帝の像。
Deror_avi - CC-BY-SA-4.0 - Wikimedia Commons
「青銅の騎士」と呼ばれるピョートル大帝の騎馬像。騎馬像がある広場は元老院広場(旧デカブリスト広場)。
Jorge Láscar from Melbourne, Australia - CC-BY-2.0 - Wikimedia Commons
モスクワ川沿いのクリムスカヤ・ナベレジュナヤ通りの向かいにあるピョートル大帝の像。金色の巻物を掲げている。
- 855=ウェイド・マーカス。
- カルヴィンの家族:1男2女。長女のエミーはユタ州立大学1年生。次女のエブリンは高校2年生。長男のジョシュアは小学校5年生。妻のジョイスは数年前にリンパ腫で亡くなる。ジョイスの妹が育児を手伝っている。
「私が毎朝起きて働くことができるのは子供たちがいるからです、ニィ所長」(カルビン)
出典:フェリシア・ハジラ・リー著、土屋つかさ監訳『イングレス ザ・ナイアンティック・プロジェクト』p.227、星海社、2015年10月27日。
- ワシントンD.C.にオフィスを構えるIQテック。
- カルヴィンは855がぐるぐる巻きにした銃をニィに渡した。
第12章
- カルヴィンはニィの部下ではなく、ニィの上の立場に立った。
- カルヴィンがIQテックへ異動する際に、ADAが保持しているCERN内のナイアンティック研究施設で起きた全ての出来事を記したデータのうち、潜在的に重要なデータが行方不明になったという。
- デブラがオランダにいる間、ナイアンティック計画の中核的研究結果がデブラの研究室のコンピューターに届いた。半年分の飛躍になるらしい。
- イリヤによれば、ヴィスル(Visur)はウイルス(Virus)の言葉遊びでもあり、リトアニア語で「どこにでも」の意味があるという。
- ダークXMはエキゾチック・アンチマター?
- ヴェスヴィオ山。
High Contrast - CC-BY-2.0-de - Wikimedia Commons
遠くに見える山がヴェスヴィオ山。
Pastorius - CC-BY-2.5 - Wikimedia Commons
ヴェスヴィオ山の火口。
ポンペイの壊滅的被害はヴェスヴィオ山の噴火によるもの。
- クルーの動画。
- クルーとP.A.シャポーの密会。以下の資料か、あるいはもっと前のものか。
- クルーとP.A.シャポーをウェイド=855が狙う。
エピローグ
- "身元不明人"ジョン・ドウ139号=車にはねられた855。
- ADAは855の脳活動のデータを集め、送信した。
読んだ感想など
実は2015年の発売当日あたりに買って、2015年10月31日のミッションデイ横須賀にいらしたNiantic社の川島優志さんにサインを頂いてから、冒頭の数ページだけ読んでいたが、英語がややできるとはいえ、当時はIngressのストーリーラインをほとんど理解しておらず、内容があまり飲み込めなかった。
しかし、ストーリーラインについてある程度解説や考察ができる程に理解ができてきた今となっては滞ることなく読み進められた。
ruindig-ingress-timeline.hatenablog.com
トレビの泉やヴェスヴィオ山(ポンペイ遺跡関連)は行った事がある場所あるいは訪れた場所と関わりがあるので、印象に残る所だった。
先に説明した通り、本書は、2012年12月1日にスイスのCERNで行われていたナイアンティック計画の研究の際にパワーキューブが暴走した事故「啓示の夜」以降のナイアンティック計画を取り巻く様々な人物の動向を描いているので、公式小説とはいってもスピンオフではなく、Ingressのストーリーラインに関わってくる内容なので、ストーリーラインを深く追いかける人にとっては見逃せない。
-end-
*1:Ingress公式コミック『Ingress 1, 2, & 3 - First Edition』の第1話「啓示の夜」に日付が書かれている。これは『イングレス ザ・ナイアンティック・プロジェクト』の巻末付録と『Ingress 1, 2, & 3 - First Edition』のGoogleブックスのプレビューでも確認できる。2020年5月3日時点では『Ingress 1, 2, & 3 - First Edition』は購入できない。